中山寺の御本尊は、十一面観世音菩薩です。そのお姿はインドの王妃勝鬘夫人(シュリーマーラー)が女性を救済することを願った故事にもとづき刻まれた等身大の像であり、特に懐胎・分娩の苦を除くとされています。
女性からの信仰は勿論のことながら、古くは源行綱(多田行綱)や豊臣秀吉も世継ぎを願い、秀頼を授かって以来、子授け・安産の寺として更に名高く知られるようになりました。
安産を願い祈祷授与されるお腹帯「御鐘緒」は、明治天皇ご生母の中山一位局が受けられ、ご平産であったことから「明治天皇勅願所」として参拝者の信仰は篤く、戌の日には全国各地よりお参りで賑わっています。
平安時代後期、八代目多田城主 源行綱(多田行綱)は、妻の不信心に悩まされていました。その妻の悪態を、当山の観音さまが鐘の緒をもって戒められたと伝わっております。
それから行綱夫婦は人もうらやむほど仲睦まじくになったことから、子授かりの信仰や、安産祈願のお寺としてお参りをする人が多くなったと言われています。
以来、「中山寺の鐘の緒」と言われ今でも保存されており、出産の無事安泰を守る「安産のお腹帯」として数百年たえることのない日夜の祈念をいたしております。
中山寺では安産のお腹帯を「鐘の緒」と呼んでおります。「鐘の緒」とは、お堂の鐘を打ち鳴らすための大綱のことを言います。
古くは、その鐘の緒を少しづつちぎって、安産のご利益を頂戴していたと伝わっております。現在ではその代わりに、僧侶が「本尊十一面観世音菩薩」と書き入れたさらしに、安産のご祈祷を施し、妊婦さまにお授けをしております。
なぜ「戌の日」にお腹帯をつけるのかと言うと、犬は極めてお産が軽く、一度にたくさんの子どもを産むことから、日本では安産の守り神として愛されてきたからです。
その戌の日(一般的には妊娠5ヶ月に入った最初の戌の日)に子宝に恵まれたことに感謝し、また授かった子どもが健康に生まれてこられるように願いを込め、初めてお腹帯を巻くと良いとされています。